法整備

第12話:いざ日本へ ~インバウンドと日本の法整備

近年の訪日観光客数は、円安基調も手伝ってますます増加、観光産業は活況を呈し、日々新しいインバウンド関連のビジネスが生まれています。新年早々の今回は、お堅い法律の話を柔らかく、訪日観光客数を増やす楽しげな法律の取り組みをご紹介します。

日本の観光施策の中心となる法律として、観光基本法の全部を改正して2006年(平成18年12月20日)に議員立法により成立した観光立国推進基本法があります。

「基本法」と名のつく法律の内容は抽象的で、その多くが訓示的な規定に止まり、具体的な権利・義務が定められていないのが通常です。まさに国の基本方針、マスタープラン的な位置付けになります。基本法としては、他にもスポーツ基本法などのエンターテインメント分野、環境基本法などの環境分野、災害対策基本法や東日本大震災復興基本法などの災害対応分野、障害者基本法、高齢社会対策基本法などの福祉分野、アルコール健康障害対策基本法や、自殺対策基本法などの社会問題分野など、様々な分野で制定されています。

具体的な権利義務が規定されないからこそ、踏み込んだ表現や、強いメッセージ性が読み取れる基本法が多く、読み応えのある法律が多いのも特徴です。観光立国推進基本法は、観光が「国際平和と国民生活の安定を象徴するもの」とした上で、「地域経済の活性化、雇用の機会の増大等国民経済のあらゆる領域にわたりその発展に寄与」し、「国際相互理解を増進するもの」であるとして、「我が国において世界に例を見ない水準の少子高齢社会の到来と本格的な国際交流の進展が見込まれる中で」、「観光立国を実現することが極めて重要」と規定し、観光になんだかたくさんの国家の重責を担わせています。

むろん具体的にも、外国人観光客の増加のための法律は複数成立しております。例えば、1997年(平成9年6月)に成立した「外国人観光旅客の旅行の容易化等の促進による国際観光の振興に関する法律」は、外国人観光旅客が公共交通機関を円滑に利用するために必要な外国語による情報の提供に対する努力義務などを定めています。また、「通訳案内士法」は、「外国人観光旅客に対する接遇の向上を図り、もって国際観光の振興に寄与することを目的」として制定された法律でして、「外国語を用いて、旅行に関する案内をする」通訳案内は、報酬を得て行う場合、通訳案内士試験に合格して登録をした通訳案内士しか行うことができないことなどが定められています。この他にも、「国際観光ホテル整備法」は、一定レベルのサービスを提供するホテル・旅館の登録とその情報提供等を定め、外国人旅行者に対する接遇を充実し、国際観光の振興に寄与することを目的としています。

しかし、どのような法律を定めたとしても利用する側がうまく活用しなければ高い効果は望めません。そして、日本に興味を持ち、日本を訪れたいと思う外国人の方々の増加には、海外在住日本人の方々が現地に溶け込み、日々親交を深めて頂いていることの絶大な影響を見過ごすわけにはいきません。そしてなによりも皆様は、実際に外国に住まい、外国人のニーズを熟知されています。観光立国推進基本法第5条には、「住民は、観光立国の意義に対する理解を深め、魅力ある観光地の形成に積極的な役割を果たすよう努めるものとする」とする規定があります。この規定は、海外に在住する日本人の方々も含める意味で、「日本国民及び住民は」とするべきであると考えます。

最後になりましたが、海外に在住する皆様は、どんな法律よりも、日本の外交と平和の維持を担っていると思います。今後も海外から、日本のことをどうぞよろしくお願い致します。1年間、このコラムをお読みいただき、ありがとうございました。