海外に在住する日本人が、同じく日本人と海外で結婚したり、また、現地の方や、同じく他国から移り住んでいる外国人と結婚したりすることも決して珍しくなくなりました。さて、結婚って、何を意味するのでしょう。こと国際結婚の法律問題は、想像以上に複雑な問題を含んでいます。
誰が誰と結婚できるのか、何をすれば結婚が成立するのか、結婚が成立した場合には夫婦にはどんな権利と義務が発生するのか、どうすれば離婚ができるのか等を定める結婚や離婚に関する法律は、各国の文化・宗教・慣習・歴史などを色濃く反映し、国によりバラエティーに富んでいます。そのため、いわゆる国際結婚をされる場合、「自分たちの結婚には、何処の国の法律が適用されることになるのか」を探る必要があります。
例えば、シンガポールに生活する日本人男性(A男)が、同じくシンガポールに生活する韓国人女性(B子)と、ハワイで結婚式を挙げて結婚する場合、この2人の結婚は、どこの国の法律に従うことになるのでしょうか。以下は、「自分達の結婚はどの国の法律に従うことになるのかを、どこの国の法律が定めるのか」という難しい問題については「日本の法律が定める」ことを前提とします。
まず、この2人の「結婚が成立するか否か」という問題については、日本人のA男には日本、韓国人のB子には韓国の法律がそれぞれ判断することになります。よって、例えば、B子が16歳だった場合、日本の法律では結婚できるにもかかわらず、B子は16歳の結婚を認めない韓国の法律に従うこととなるため、A男はB子と結婚することができません。これに対して、「どういう手続きを取れば結婚が成立するのか」については、今度はハワイ州の法律で判断することになります。日本の法律では必要となる成人2名の証人がいなくても、また、婚姻届を提出しなくても、A男はB子との婚姻を成立させることができるのです。
海外で成立した結婚も、日本人は日本の在外公館に届け出ることが必要ですが、その届出はあくまでも「成立した結婚の報告」に過ぎず、国内で提出する婚姻届とは意味合いが異なることに注意が必要です。相当以前に外国で結婚した人とは自然消滅し、離婚の手続きを取らなかった場合で、日本の役所に婚姻届を提出していなかったことを良いことに、他の人との結婚届を提出してしまった場合、懲役2年以下の刑が科される重婚罪に問われる可能性もあります。
一方で、「婚姻した夫婦の間の権利と義務には何があるか」という問題は、一転、シンガポールの法律に基づくことになります。同居の義務や、夫婦間の協力義務、貞操義務、2人の財産問題などについて、日本の常識が通用しないことがあることに注意が必要です。
結婚前の恋人から、結婚の意味を問われ、本コラムのように答えた場合、間違いなく嫌われるでしょう。愛し合う2人が永遠を誓うことだけは、世界共通のようなので、どうか皆さん、夫婦円満で楽しい在外生活をお楽しみ下さい。