Traffic accident

第2話:一時帰国中の交通事故

東南アジア在住の皆様は、頻繁に近隣各国を行き来され、日本へ一時帰国の機会も多いことでしょう。一時帰国中の交通事故の場合、賠償は原則、日本の法律に従い処理されます。しかし、「日本でゆっくり治療」というわけにもいかず、事故に遭われても帰国される方がほとんどでしょう。ここに海外在住者特有の注意点が潜んでおります。

まず、日本で交通事故に遭い旅程を早めて帰国したり、滞在期間を延期したりする場合、ホテル代、通信費、航空券のキャンセル費用などが損害として認められることがあります。また、生死をさまよう事故では家族の渡航費などが認められた例もありますので、しっかり領収証等を残しておきましょう。

また、居住国での帰国後の治療費も、原則的には賠償対象です。しかし、日本では承認されていない治療法、非常に高額な医療費の場合は、その全部または一部が認められないことがありますので、治療の際には内容を理解し、場合によっては医師と治療方針を協議する必要があることを留意してください。

さて、「損害として認められる」ことと、「実際に支払ってもらえる」こととは全く同義ではありません。海外在住者が日本で交通事故に遭った場合最も困るのが、被害者が海外にいることを幸いとし、加害者がまじめに取り合わない場合です。

交通事故の直後は何ともなくても、身体の異変が後から出ることもあり得ます。まずは、事故直後に加害者と共に警察に届け出て、相手方の免許証と任意保険会社の連絡先を聞き、保険会社の担当者と連絡を取り、治療費の請求先や請求方法を確認するよう心がけてください。

また、加害者が任意保険に加入していない場合も、日本では、全ての自動車に「自賠責保険」の付保が強制されており、被害者は直接自賠責保険の会社に賠償請求できます。一般的な外傷の場合、自賠責で120万円までの賠償金がカバーされています。事故を警察に届け出ていれば、加害者が取り合わなくても「交通事故証明書」で簡単に相手方の自賠責保険会社を知ることができます。

さらに、相手方が自賠責保険にも加入していない場合や、例えばひき逃げでも泣き寝入りは早計です。日本には、政府(国土交通省)が加害者に代わって一定限度の損害額を被害者に立て替え払いする制度があります。

また、最近は「弁護士費用特約」付き自動車保険を用意する保険会社が増え、家族がその特約に入っていたり、特約に入っている友人の車への同乗中の事故だった場合、被害者自身がその特約を利用し、自己負担無しで弁護士に相手方への賠償請求を依頼できることもあります。

交通事故という危険を引き受けた現代社会が用意した制度をフルに活用し、「知らなかったから損をする」ことにならないよう、本コラムが一助になれば幸いです。