違法コピー

第9話:違法コピー品・正規品の日本への持ち込みと法規制

違法にコピーされたDVDが、色あせ、斜めにかしげて印刷されたパッケージに飾られて堂々と販売されていたり、高級ブランドと同じデザインのバックが、夜店で、3,000円程で売られていたりする姿は、まだまだ東南アジアの国々では、珍しくないですよね。

これらの知的財産権を侵害した製品の日本への輸入が処罰の対象となることについては、当然よくご存知のことと思います。

具体的には、日本の関税法にて、商標権や、著作権等を侵害する品が、覚醒剤等の違法薬物や、拳銃等の銃砲類と同様に、輸入禁制品とされており、これらを密輸入した者や、密輸入しようとした者は、10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、場合によってはその両方が罰として課されることがあるのです。また、輸入禁制品は、税関によって没収、廃棄されます。

さて、それでは、海外で販売されている正規品を、正規の値段で購入し、正確に関税の申告も行って輸入した場合、その正規品の販売は、いかなる知的財産権の侵害にもならずに、日本国内で販売できると考えても良いのでしょうか?

以下では、知的財産権の中でも、「商標権(ブランドを示すマーク、記号や文字等を独占して使うことのできる権利。登録を受けることによって発生する。)」の侵害に該当しないかに絞って検討します。

例えば、タイ国の有名ブランドA社が、タイ国で登録したA社のロゴをあしらった人気バック

”X”をタイ国内では30万円で販売しているものの、品薄が続くA社の日本の正規代理店であるB社では、その倍額の60万円で売られている場合を事例として扱います。その価格差に目を付けた輸入業者C社が、タイで正規の方法でXを仕入れて、日本国内で、45万円で販売したとします。

この問題は、いわゆる「並行輸入」の問題として議論されており、現在では、以下の要件を満たさない並行輸入は、B社の商標権を侵害する行為であるとされています。

(1)並行輸入の対象となる商品への商標が適法に付されたものであること
(2)輸入元の商標権者と日本の商標権者が実質的に同一であること
(3)並行輸入された商品と、日本の商標権者が扱う商品とが、その品質において実質的に差異が無いと評価できること

上記の事例では、例えば、タイ国で販売されている人気バックXと、日本で販売されているXとは、実は違う品質の商品である場合などには、(3)の要件を満たさないこととなります。

また、例えば、C社が、工場横流し品等を独自のルートで調達した場合などには、(1)の要件を満たさない事が考えられます。これらの場合、C社による輸入販売行為は、商標権侵害として違法となり、C社は、B社から、商標権侵害として、販売や輸入の差止請求や、損害賠償請求、また、刑事告訴される可能性も生じます(法定刑は、10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金刑、もしくはその両方です)。

このような紛争に巻き込まれるのは、ビジネスが軌道に乗り始め、いよいよ収益が出始めた頃というのが多い印象です。横のつながりを大切にして、情報収集を重ねつつ、国際ビジネスを展開・成功させて頂きたいと思います。